声なき死者の思い
タイトルがどうしても気になり購入してしまった本。
自殺や孤独死など,特殊な死体の清掃業を営んでいる著者の記録が綴られた本だ。彼が対峙するのは,死後ある程度時間が経過し腐乱が激しい死体現場など,通常の清掃業者では対応できない場所だ。
死後の時間が長いということは発見が遅かったということであり,それだけ身寄りが少ないことの現れでもある。本書では,そんな彼らの部屋の様子や死に至った場所,死に至らしめた手段などが綴られており,その端々に生前の様子が垣間見えた。
ある自殺現場には,何枚もの履歴書,交通誘導に用いる赤い棒,工事用ヘルメットなどが残されていたそうだ・・・。
僕は一瞬息が止まったような気がした。
とても他人事とは思えない!
きっと頑張っていたのだ。
苦しみに耐えながら頑張ったけど・・・どうしても無理だった。
そんな思いが伝わってくるような気がした。
死者の口は二度と開かないが,生活痕は彼の苦しい胸の内を雄弁に語っている。
彼を自殺に追い込んだかもしれない現代社会,そして僕自身もこのままじゃいけないと思った。
何ができるだろうか。
とにかく『何かをやらなきゃ』と思わずにはいられなかった。